Archive for ビジネスと経営

オープンソースでビジネスするということ

KSKアナリティクスでは、アナリティクスに特化したオープンソース(OSS)を取り扱っています。OSSには、Hadoopを提供するApache Software FoundationなどNPO的な機関もあれば、通常の営利目的の企業がソフトウェアを効果的に開発・提供するためソースコードを公開しているOSSもあります。

私及びKSKアナリティクスが気を付けていることは、そのOSSがどのようなバックグラウンドで生まれてきたか、そして何を目指しているのかです。それはOSS(著作者)が採用するライセンスに反映されます。(ApacheライセンスとAGPLでは大きな想いの違いが存在します。)またそれを開発したベンダーのビジョンやビジネススタイル、マネジメントメンバーの姿勢を知ろうとします。そうしないと後々上手くいかないからです。

例えばOSS BIのPentahoがあります。彼らは2005年に4つのOSSが集まり、VCから資金を調達して作られました。当初からビジネスを強く意識していました。なのでKSKアナリティクスはコミュニティ版のサポートをしてほしいというお客様のリクエストをお断りしてきました。なぜなら我々がそれをやってしまうと、我々は一時的に儲かるけども長期的なPentahoのOSSは成長しないからです。それは回りまわってユーザーやメンバー、自分のためにもなりません。

当社は経営理念の一つに、”地域やコミュニティに貢献(K)を”を掲げています。OSSは正直いって素晴らしい考え方だと思います。これらの概念を作ったGNUのR.ストールマンはじめ先人たちに本当に敬意を表します。ただその果実を収穫するだけだとすぐに木は枯れてしまいます。多くの水をやり肥料をやる人や時間が必要です。OSSの木を育てることはやりがいがあり、価値のある仕事だと思っています。

田んぼと数学テスト(Rice Paddies and Math Tests)

Malcom Gladwellの「Outliers」を読みました。Amazonの社会心理学分野で1位になっているベストセラーですので、読まれた方も多いかもしれません。Outlierとは、統計的には異常値を指しますが、転じて「桁外れなパフォーマンスを出す人」の意味でつかわれます。この本では、ビル・ゲイツやビートルズ、モーツアルトから、トップアスリートなど、一般的に桁外れのパフォーマンスを出す人の要因を、分かりやすい記述と例示により示しており、とても面白いです。

その中の第8章で、田んぼと数学テスト(Rice Paddies and Math Tests)がありました。これは”なぜアジア人が数学スキルが高いのか”を考察しています。事実、国際数学・理科教育調査(TIMSSなどでも、シンガポール、香港、韓国、台湾、日本などが上位にきます。なぜでしょうか?

もちろん諸説あるとは思いますが、Gladwellは稲作の文化との関連性を説明します。東洋は基本的に何百年、何千年にもわたり、米が中心の文化を形成してきました。米作りは他の穀物作りに比べて大きな違いがあります。まず田んぼは、Open Up(切り開く)ものではなくて、Build(作り上げる)もの。固い土の上に柔らからい泥を平坦に延ばし泥田を作ります。また肥料もやり過ぎてはだめ、足りなくてもだめ。水の量も調整が必要です、灌漑設備も必要になります。天候も考慮して作業を進めなければなりません。非常に手間がかかります。西洋の農業は、広大な土地に種をまき、一気に収穫する効率重視型です。そのために作業を効率的に行うマシーナリー(機械)が発達しました。東洋の田んぼはSkill Oriented(スキル重視)型です。ホテルの部屋のような小さな田んぼで、収穫高を上げるために、知恵を絞って工夫をします。そのためには労を惜しまず退屈な作業にも耐えます。

またそのモチベーションも異なります。英語にPeasantという表現があり「小作人」と訳されますが、西洋と東洋ではそのニュアンスが若干異なります。西洋においては、小作人は労働のみを提供する人であり、その人がどのような成果を出しても取り分は変わらないのに対し、東洋での小作人は、基本的にその田んぼのマネージャーです。より良い収穫ができればその分だけ自分の取り分が増えます。そのために頑張ろうというインセンティブが働きます。

数学においても、この退屈な作業に耐えて、喜んでハードワークを行うことが大きな要素になります。GladwellによるとTIMMSのテストの結果とテスト終了後のアンケートへの回答率(アンケート内容ではなく30個の質問にいかにまじめに答えているか)は非常に高い相関があります。もちろんこの回答率が高いのは、シンガポール、香港、韓国、台湾、日本です。

こうして見ると、我々は先人から大きなGiftをもらっていることになります。Skill Orientedな文化のおかげで現在では、米ではなくモノづくりにおいて、大きな経済発展を得ることができたといえます。こうした小さなリソースを上手く活用し、工夫によって生産性を上げていくことは、我々東洋人(日本人)にとって得意なところです。

私は同じことがデータ分析にも言えると考えます。問題点に気づき→データを分析し→現場に浸透させて生産性を上げていくプロセスは、日本のホワイトカラーにとって難しいことではありません。アナリティクスという概念自体は、西洋から入ってきたものかもしれませんが、我々はそれらを上手く活用し、成果を上げることに知恵と忍耐と使うことができます。そのためにも、日本のビジネスマンが今のExcelのように統計・データマイニングツールを当たり前に使える環境や仕組みを作っていきたいですね。実現すればすごく面白そうなイノベーションが起きそうです。これはオープンソースの分析ツールを提供するKSKアナリティクス使命のようにも思います。

 

シンガポール

 

シンガポールに行ってきました。約10年前にマレーシアに行くときに経由して以来です。今回は、現地のパートナーとのミーティングがメインでした。来年にかけて新たなプロダクトを展開する予定です。また時期がきましたらご案内したいと思います。

シンガポールは、コンパクトにまとまっており、治安もよく法整備も進んでおり、ビジネスするには最適な場所ですね。ASEAN各国にも近いですし、日系企業の進出が多いのもうなづけます。中国系を中心にインド系、マレー系、欧米系の多様な人種構成で活気があり、アジアの元気さを実感できました。

米国に来ています

今週は久しぶりにUSに出張しています。まずはSan Francisco経由でOrlandoに到着。Orlandoは米国南東部のフロリダ州。日本でいう沖縄のようなところです。もうすっかり夏でした。

目的の一つは日本からはるばるいらした複数社のお客様のアテンドです。Pentahoのオーランド本社を久しぶりに訪問。Richard、Jake、Doug、Rodなどマネジメントメンバー勢ぞろいでした。Richardのいつもの創業からの歴史(といっても9年目ですが)とビッグデータへの取り組み、Jakeからは製品ロードマップとHadoopとの親和性についてプレゼン。ご参加者からは短い時間でしたが積極的に質疑応答いただきました。

Pentaho社にPentaho&KSK Decoチョコをお土産に。Wow, Cool!と言ってくれましたが、味の方は私は食べてないので分かりません。美味しいことを祈っています。。。

 

Orlandoの後は、San Franciscoへ戻りました。San Franciscoは、5月とは思えないほど肌寒く、風もびゅーびゅー吹いて、薄着には堪えました。さらにホテルのシャトルバスがなかなか来なくて、やっと深夜12時過ぎてチェックイン。

翌日Cal trainに乗って、San Francisco市内に。Cal trainは初めて乗りましたが、自転車が積めるんですね。市内の移動には便利そう。

さらに次の日はPalo Alto, Mountain Viewのいくつかの企業を回りました。2年前に比べても、ビッグデータやアナリティクスを事業とするベンチャー企業が、すごく増えていっている印象を持ちました。またスタートアップであればあるほど、みんな尖っててユニークですね。この中から、未来のリーダー企業も出てくると思います。改めて層の厚さを実感。ただ、日本で展開する場合は、尖りすぎていると市場として成立しない場合が多いので、もう少し一般化する工夫が必要だと思います。

TreasureData Ohtaさん、Tamuraさんのところに、PentahoのRichardと訪問。CloudベースのデータウェアハウスとEnd to Endのビジネスアナリティクス、とても相性がいいと思いますので、ぜひ良い関係を結んでもらいたいと思います。日本人がシリコンバレーでStartUpを起こして、頑張っておられるのを見ると応援したくなります。とても前向きなエネルギーをもらいました。

 

 

 

 

優れたビジネス・リーダーにはなぜ読書家が多いのか?

「読書家→優れたビジネス・リーダー」、とは必ずしもいえませんが、

「優れたビジネス・リーダー→読書家」というのは、みなさん感じておられることかと思います。

読書は、優れた(何をもって優れているかは価値基準はいろいろありますが)ビジネス・リーダーにとって、十分条件ではないにしても、必要条件ではないでしょうか?

今、「坂の上の雲」を読んでいます。かなり以前に読んだはずなのですが、今読んでみるとまた違った感覚で読めて面白いです。その中で、秋山真之の描写に、はたと気づくことがありました。秋山真之は、日露戦争において作戦参謀として大きく活躍した海軍の人ですが、彼がこのポストに上るきっかけになったのが、米国留学中に米西戦争を観戦武官として視察したレポートでした。その正確さ、ポイントのまとめ方は秀逸で、類を見ないほど素晴らしかったといいます。彼は、非常に多読家で有名でした。「秋山の天才は、”帰納”によるものである」と言われました。

この”帰納“という言葉で、はっとしました。物事を帰納する力こそ、ビジネスリーダーに必要だと思ったからです。それは私自身への反省でもあります。つまり、以下のようなことを問われた気がしたのです。

「いくら多くの本に触れても、そこから結論に帰納しなければ生きた知恵とならない。」

「いくら多くの情報をインターネットで得ても、そこから結論に帰納しなければ単に”知っている”というだけで終わる。」

「いくら海外のMBAで多くのケースタディを行っても、そこから結論に帰納しなければ、実際のビジネス上の意思決定では助けにならない。」

「いくら多くのデータ活用事例をセミナー等で集めたとして、そこから結論に帰納しなければ、自社やお客様にとっての有効活用は程遠い。」

当たり前のことなのですが、多くの情報を集めた上で、自分なりの肚(はら)に落とすことを忘れては、結局知識は使い物になりません。秋山真之の仕事(彼は一生の大道楽と言っていたようです)に対する姿勢から、そんなことを改めて気づきました。

優れたビジネスリーダーは、読書から多くの情報や経験を得るだけでなく、自分の中で帰納させることで、ゆるぎない信念や判断基準を醸成させるから、偉大な仕事ができるように感じます。私も日々の読書に対する姿勢や考える時間の取り方を見直していきたいと思います。まずはこのBlogが私の”帰納”の第一歩です。

 

 

コモディティ化する世界

Bubble World Reflection
コモディティとは、直訳すると日用品という意味ですが、コモディティ化というと、一般的には供給者による価値やサービスが均一化することで、差別化が難しくなることを言います。

最たるものがハードウェアです。今ではPCはコモディティとなりました。携帯電話もそうです。スマートフォンももうすぐコモディティとなるでしょう。カーナビも液晶テレビも、そのコモディティ化の速度は、どんどん早くなっていると思います。オープン化と標準化により、参入の敷居が低くなることでコモディティ化は起きます。

ソフトウェアの世界でもそれは同様で、オープンソースの出現により、OSはコモディティになりました。データベースもミドルウェアも同じです。KSKアナリティクスが手掛けるBI(ビジネスジェンス)やデータマイニングも、いずれコモディティ化していくでしょう。ソフトウェアは、①新たなコンセプトが出て、②それらを実現するソフトウェアが出現し、③成熟してコモディティ化していく、プロセスを繰り返します。

このように書くとコモディティ化は、マイナスなことばかりにも聞こえますが、そればかりではありません。コモディティ化することで、誰でも最新かつ最先端の技術を使うことができます。それによってイノベーションが触発されます。またそれは才能ある個人、新しいベンチャー企業、新興国の人々に恵みをもたらし、富の再分配につながります。例えば、

・Webの登場によって、誰でも多くの情報にアクセスし、利用できるようになりました。

Amazon Web Serviceの登場によってベンチャー企業でも大規模なクラウド環境を構築できるようになりました。

オープンソースの登場によって、だれでもOSやDB、BIソフトウェアを使えるようになりました。Hadoopの登場によって、データを低コストかつスケーラブルに処理できるようになりました。

ハーバードやMIT等が講義アーカイブの無償提供によって、新興国の子供たちでも大学の講義を受けることができるようになりました。

経営は、「ヒト」「モノ」「カネ」といいますが、こうしたコモディティ化する世界においての競争優位は、「ヒト」につくはずです。もっというなら、人のコンセプチュアルなスキルにつくはずです。なぜなら、そのコンセプトを実現できる環境が、以前に比べて格段に整っているからです。

当社が対象とするデータ分析やデータサイエンスの分野では、今後はさらにソフトウェアの価値はコモディティ化していくでしょう。当社はそれをオープンソースBI/BAで促進していくつもりです。それは、従来型のソフトウェアベンダーにとっては脅威かもしれませんが、私たちは、それによってさらなるイノベーションが触発されることを期待しています。ただ、企業の戦略的データ活用は、最もコモディティ化が難しい分野です。ここはまさにデータサイエンティストの出番ですね。

コモディティ化するものとコモディティ化しないもの、それぞれのライフサイクルの波をうまく取り入れたいですね。

 

 

図書支援制度を始めました!

KSKアナリティクスでは、社員の図書支援制度を始めました。以下のような取り組みです。

・1人月1冊まで好きな本を購入可能。(Max5000円)

・ジャンルは問わないが業務や自己啓発に役立つもの

・レシートをもとに月の経費精算時に請求

・買った本は会社本棚に保管、他の人も利用できるようにする。

 

特に技術情報やビジネス情報は、うちのような知識集約型の労働には必要不可欠です。書籍は、先人が苦労して得られた体系的な知識が何千円のコストで手に入れることができる、素晴らしいものです。

一方で特にオライリー等の技術書は良書が多いものの、個人で購入するには結構きつい。。。ということで、会社で負担することにしました。金額制限もよほど高価な本でなければ問題ないはずです。

会社自体の成長も重要ですが、その成長を支えるのは社員です。社員の成長なくして、会社の成長はないと実感しています。人を育てる、なんておこがましいことは言えませんが、人が育つ環境や制度は用意していきたいと思います。良い環境があれば人材は育つと思います。

 

 

中小企業とベンチャー企業

先日、独立を視野に入れている方から質問を受けました。
「森本さんは、何がやりがい(モチベーション)なのですか?」と。
「その時は、チームをまとめて何か目標を達成するのがもともと好きなんですよ」
なんて話ましたが、後から考えてみるといろんなモチベーションがあることに気づきました。

お金?名声?、私も人間なのでもちろんこうした欲はあります。ただこれだけを目的にするのであれば、別に現在のBI、アナリティクス事業にする必要はありませんでしたし、どこかでやる気をなくしていたような気がします。

つまるところ、モチベーションの源泉は、イノベーション(世の中や業界を変えるインパクトのあること)を成し遂げられるかもしれないというワクワク感、そうなったら自分も周りのみんなも物心ともにハッピーになれるという期待感、が源であるように思います。

中小企業とベンチャー企業、どちらも企業規模でいうと同じカテゴリーかもしれませんが、この想いや野望を持っているかどうかが分かれ目だと思います。

KSKアナリティクスはベンチャー企業です。オープンソースとアナリティクスを武器に業界にイノベーションを起こす存在でありたいと思います。